FBRとは

FBRとは、高速中性子を利用して燃料を増殖するFast Breeder Reactorの略で、日本では「高速増殖炉」と訳しています。
なお、高レベル放射性廃棄物を減容化や有害度低減にも活用できることから、高速中性子を利用した原子炉を、FR(高速炉)と称することもあります。(詳しくは、こちらを参照ください)

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増殖のメカニズム

軽水炉の核分裂とプルトニウムの生成

軽水炉の核分裂とプルトニウムの生成

ウランにはいくつかの種類があり、現在、原子力発電所(軽水炉)で燃料に使用しているウラン235は、天然のウランの中には0.7%しか含まれていません。残りの99.3%はウラン238と呼ばれ、核分裂しないウランです。

ウラン238は中性子を吸収すると、燃料に使用することができるプルトニウム239に変わります。

ウラン235やプルトニウム239に中性子が衝突すると、中性子が原子核に吸収され、核分裂を引き起こしたり、重い物質(ウラン236、プルトニウム240など)に変わったりします。また、核分裂した場合には、エネルギーと共に中性子が2~3個飛び出してきます。飛び出した中性子のうち、一部の中性子は他のウラン235やプルトニウム239に衝突して、また核分裂を引き起こします。このように、次々と核分裂が起きることを核分裂連鎖反応といいます。

高速増殖炉の仕組み

高速増殖炉の仕組
  • 高速増殖炉(FBR)では、プルトニウムを増殖させるため、核分裂で生じる高エネルギー(高速)の中性子を減速させず、かつ燃料を密に配置する必要があることから、原子炉から熱を取り出す材料(冷却材)として、質量(原子量)が小さい水(H2O)を使用せず、熱伝導性が良好なナトリウムを使用することが一般に合理的であると考えられています。
  • 原子炉の中にある燃料の核分裂によって発生した熱はナトリウムによって、中間熱交換器に送られます。この原子炉を通るナトリウムを1次系ナトリウムといいます。中間熱交換器では、2次系ナトリウムと呼ぶ別の系統のナトリウムに熱を伝えて、それが蒸気発生器に送られます。蒸気発生器の中では、細管の中を流れる水を熱して蒸気を作ります。この蒸気でタービンを回し、発電機で電気を作るのは火力発電所と同じです。
  • 1次系ナトリウムは、原子炉を通るので放射性物質を含みますが、2次系ナトリウムは熱交換器で1次系ナトリウムと仕切られているので放射性物質を含みません。蒸気発生器で作られる蒸気も放射性物質を含みません。
  • FBRにおける燃料は、プルトニウム酸化物とウラン酸化物を混合したもの(MOX燃料:Mixed Oxide Fuel)や、プルトニウムとウランの合金によるもの(金属燃料)等があります。
  • なお、高速増殖炉の主な炉型(プラント構成)としては、ループ型炉とタンク型炉(注)があります。
    • 「タンク型炉」は、欧州等では「プール型炉」とも呼ばれております。
  • 下図のとおり、ループ型炉は燃料・炉心を収納する原子炉容器から配管を引き出し、炉心で熱された冷却材ナトリウムを、原子炉容器の外で熱交換し、2次系ナトリウムの系統へつなげる方式です。これに対しタンク型炉は、原子炉容器の中に熱交換器も収納して、2次系ナトリウムへの系統につなげる方式です。
高速増殖炉の仕組

高速増殖炉の利点

1.ウラン資源の有効利用

炉心の周辺部はブランケットと呼ばれる天然ウラン又は劣化ウラン(ウラン238)で囲む構造になっています。 ブランケットでは、炉心から出る中性子がウラン238に吸収されて、プルトニウム239に転換されています(「増殖のメカニズム」を参照ください)。転換されたプルトニウム239は再処理施設で新たな燃料に加工されます。このようにしてウラン資源が有効活用されます。

2.放射性廃棄物の核変換

原子炉から出てくる使用済み燃料には、再利用できるウランやプルトニウムの他に、マイナーアクチニドと呼ばれる寿命の長い放射性物質が含まれています。マイナーアクチニドは高速中性子によって核分裂を引き起こしやすいため、高速増殖炉では、核燃料と一緒に装荷することで核分裂させて半減期の短い放射性物質に変換することができます。

放射性廃棄物の核変換

高速炉と高速増殖炉

  • 高速中性子を利用した原子炉を「高速炉」(Fast Reactor)、そのうち、燃料の増殖を目的としたものを「高速増殖炉」(Fast Breeder Reactor)と言い、高速増殖炉では燃料として使ったウランよりも多くのプルトニウムを増殖することができます。
  • 「高速炉」では、中性子の動きが速いため、炉心の核分裂で出てくる中性子の数が増えます。
  • また、「増殖炉」では、ウランとプルトニウム以外に中性子が無駄に吸収される割合も減ります。その結果、炉心の周りの燃料領域に用意されているウラン238に中性子を吸収させることで、プルトニウムを増殖することが可能となります。
  • なお、「高速炉」は、使用済燃料の再処理後に回収される高レベル放射性廃棄物を燃料成分として活用し、これを減容させる「専焼炉」(ABR:Actinide Burning Fast Reactor)として使用することも考えられます。
  • 参考文献

核燃料サイクル

原子炉から出てくる使用済み燃料の中には、核分裂せずに残ったウランや、新たに生み出されたプルトニウムが含まれています。そこで、使用済み燃料を再処理して、ウランやプルトニウムを取り出し、新しい燃料として再度、原子炉で使うことを核燃料サイクルといいます。

核燃料サイクル
出典:(財)日本原子力文化振興財団「原子力・エネルギー」図面集 2009

世界の高速増殖炉

高速増殖炉の開発は、海外でも日本と同じように、実験炉→原型炉→実証炉→実用炉(商用炉)と、段階的に進められ、実用炉(商用炉)の建設をめざしています。

世界の高速増殖炉
総合資源エネルギー調査会 電力・ガス分科会 第23回 原子力小委員会資料より